仕切りながら光を通し、空間に開放感を与える「ガラス」。さまざまな建築に一般的に使われ、快適をもたらす建材「ガラス」に防火性能が備われば…。その声に応えて誕生したのが、超耐熱結晶化ガラス〈ファイアライト〉です。
ガラスの透明性・採光性などに加え、非常に優れた防火性能を持つ〈ファイアライト〉は、防火区画のデザインに大きな変化をもたらし、ガラスの可能性を大きく広げた建築材料です。
万が一、火災が発生した時、〈ファイアライト〉は安全確保に大きく貢献します。たとえば普段、目にしないスチール製の防火シャッターや防火ドアは、突然閉鎖することで、日常とは異なる空間に一変し、避難する人々がパニックに陥ってしまうことがあります。しかし〈ファイアライト〉なら、普段、見慣れた空間の中で、落ち着いた避難をサポートします。また、ガラス越しに被災状況を確認でき、適切でスピーディな消火活動を可能にするメリットもあります。
〈ファイアライト〉のもっとも優れた特長は、熱膨張係数がほぼゼロに近いということ。800度に熱せられた〈ファイアライト〉に冷水をかけても割れる心配はありません。つまり、火災発生時のスプリンクラーや放水などによる急冷にも耐え、炎を遮(さえぎ)り、延焼を抑えるのです。
※通常の板ガラスが熱割れするのは約200度。鉄も約500度で強度が低下します。
「UL規格」では、防火戸の試験として消火作業時の安全面を考慮し、加熱試験に加え、加熱直後に放水試験を行い、消火作業中においても防火戸として著しい欠陥が起こらないことを確認することが義務づけられています。〈ファイアライト〉 はこれらの厳格な安全規格をクリアし、認定を受けた防火戸用ガラスです。
※「UL規格」は、アメリカの認証機関(Underwriters Laboratories Inc.:UL)が策定する製品の安全性を保証する規格です。ULは1894年に設立された非営利団体で、火災、盗難、その他の事故から人命や財産を保護するための安全規格開発、研究、試験、検査を行っています。
防火設備(旧:乙種防火戸)用ガラスとして1988年に初めて製品化され、その後、国内初のシースルー特定防火設備(旧:甲種防火戸)の認定も取得した〈ファイアライト〉。この“超耐熱性能”を可能にしたのが、特殊ガラスのエキスパート、日本電気硝子の「結晶化技術」です。本来、結晶構造を持たないガラスの一部を結晶化。特殊組成のガラスを熱処理し、加熱すると収縮する性質を持つ微小な結晶を均一な状態で固体化。残されたガラス質の膨張と結晶の収縮が打ち消しあうことで熱膨張係数をゼロに近づけました。
日本電気硝子は約50年以上も前、独自の「結晶化技術」を活かし、「低膨張結晶化ガラス」を開発しました。この技術は、わずかな膨張が大きな影響を与える光学機器や光通信、液晶や半導体製造をはじめとする、精確性・寸法安定性が求められる分野の技術進歩に貢献。一方で、耐熱食器、IH・ガス調理器のトッププレート、ストーブの前面窓、建築用途(防火ガラス)など、私たちの生活の中にも広く応用され、さらなる進化、用途の拡大に期待が集まっています。
急熱・急冷に強い
〈ファイアライト〉
2枚を特殊樹脂で合わせガラスにすることで、
〈ファイアライト〉
の優れた「耐熱衝撃性」に「衝撃安全性」が加わった製品が
〈ファイアライトプラス〉
です。
万が一、割れても破片の落下や飛散の心配のない「安心」と「安全」を兼ね備えた「特定防火設備用安全ガラス」で、教育施設をはじめ、不特定多数の人が集まる公共施設・駅などに最適な防火安全ガラスとして高く評価されています。
私たちは、幅広いガラス材質と成形・加工技術をベースに、建築・土木分野でも、機能とデザインの両面からユニークな製品をお届けしています。
例えば、壁でありながら光を通し、断熱性・遮音性に優れた「ガラスブロック」。街でよく見かけるガラス建材です。建物の外壁や地下鉄駅の柱などで見る「ネオパリエ」は、独特の艶やかな質感を持ち、天然石より優れた耐候性を備えた結晶化ガラス建材です。また、コンクリートやモルタルの補強材として繊維状のガラス、耐アルカリ性ガラスファイバ「ARGファイバ」が活躍しています。水路補修・補強、トンネルはく落防止用など土木分野でも採用されている縁の下の力持ちです。
特殊ガラスのエキスパートとして、ガラスの基幹技術「材料設計」・「プロセス(溶融・成形・加工)」・「評価技術」を育み、そこから生まれた「精密加工・超薄板・超大型基板・複合化・結晶化・環境対応」などの応用技術。それらの技術を融合することで、時代が求める先進の製品を誕生させてきました。私たち日本電気硝子はこれからも、ガラスの基幹技術をベースに、培ったさまざまな応用技術を駆使し、新たな特殊ガラスを生み出し続けます。