医療分野の製品は、人の生命に大きく関わるものとして高い安全性や信頼性が求められます。私たちは、長年、こうした厳しい品質管理が要求される分野に使用されるガラス製品を開発・製造・供給してきました。そして今日、薬品の安定的な管理を可能にするガラスやX線診断時に医療従事者を放射線被ばくから守るガラス、さらには、水分に強く、高輝度の光で医療用照明の可能性を広げる蛍光体ガラスから、クリアな映像で、より正確な診断を可能にするディスプレイ用ガラスまで、医療の進化を支えるさまざまなハイテクガラスを生み出しています。
非常に薄く、フィルムのようによく曲がる特徴を持ち、マイクロ流体チップのバルブの役割を果たす「ガラスリボン」など、高度医療を支える多彩な機能性ガラスがあります。また、アンプルやバイアルびん、注射器のシリンジやカートリッジなどに使われている化学的安定性に優れたホウケイ酸ガラスの管も製造しています。
これからも、私たちは医療事業の新たな芽となる技術の進化に貢献していきます。
理化学研究所で開発された「微小化学分析用ガラス製マイクロ流体チップ」に、当社の「ガラスリボン」がバルブとして採用されています。従来、流体制御用バルブには樹脂製バルブが使用されていましたが、化学安定性やガスバリア性、耐用性に難点がありました。
そこで当社は、「空気や水を通さない(優れたガスバリア性)」「化学的安定性」などのガラスの優位性はそのままに、わずか4ミクロンという極薄で、繰り返しの折り曲げに耐えられるほど柔軟性に優れた「ガラスリボン」を開発し、樹脂の弱点を全て解決した画期的なマイクロチップの実現に寄与したのです。
無研磨でも平坦度が極めて高い極薄のガラスを実現するオーバーフロー法。その製造技術から誕生した基板用ガラス「OA-10G」は、薄く、平滑性・耐薬性・耐熱性に優れ、無アルカリ組成のためTFT(薄膜トランジスタ)の特性を損なわないガラスです。
X線ディテクターのセンサー基板に必要とされるこれらの条件をすべて備えた「OA-10G」はまさに最適のガラスと言えます。
※デジタルX線画像診断装置のX線検出器。従来はフィルムで撮影していたが、デジタル化によりX線を直接画像化できるため即時画像診断が可能となった。デジタルデータとして画像を得られるため、システム化しやすく、コンパクトな点がメリット。
X線やガンマ線など、放射線による画像診断施設の操作窓などに使用される放射線遮蔽用ガラス。私たちの「LXプレミアム」や「Pro-GR」は優れた遮蔽性能で医療従事者を日々の放射線被ばくから守ります。高い透明度を通して良好な視界が得られ、正確で迅速な検査・撮影にも寄与します。
そして新たに、放射線に加えて、電磁波も遮蔽する新製品「MR-LITE」が誕生しました。最先端の画像診断機器PET-MRIの操作窓に最適なガラスとして期待されています。
「OA-10G」で使われている超薄板ガラス製造技術。超薄板ガラスを安定して製造する技術である「オーバーフロー法」により、「より薄く」という声に応えました。大きな特徴は、研磨することなく、非常に平滑な表面を成形することができるという点。現在は30ミクロンという世界最薄※の超薄板ガラスの製造が可能です。また、「ガラスリボン」は延伸製造技術を応用して誕生しました。
※2014年12月現在、自社調べ
「MR-LITE」は、独自の「貼り合わせ技術」で放射線遮蔽用鉛ガラスと電磁波遮蔽性能を持つ、特殊なメッシュをカバーガラスで貼り合わせた、放射線と電磁波の両方を遮蔽する高機能ガラスです。診断に放射線と電磁波を使用する最先端画像診断装置PET-MRIの観察窓に最適です。
「ルミファス®」では、独自の「複合化技術」により、粉末ガラスと蛍光体を均一に分散化。LED照明などで、色のバラつきが極めて少ない高光度な発光を実現しました。樹脂に代わる新たな素材として、注目されています。
特殊ガラスのエキスパートとして、ガラスの基幹技術「材料設計」・「プロセス(溶融・成形・加工)」・「評価技術」を育み、そこから生まれた「精密加工・超薄板・超大型基板・複合化・結晶化・環境対応」などの応用技術。それらの技術を融合することで、時代が求める先進の製品を誕生させてきました。私たち日本電気硝子はこれからも、ガラスの基幹技術をベースに、培ったさまざまな応用技術を駆使し、新たな特殊ガラスを生み出し続けます。