審査委員長 | 古谷 誠章 (建築家・早稲田大学教授) |
審査委員 | 中村 竜治 (建築家・中村竜治建築設計事務所 主宰) |
大西 麻貴 (建築家・一級建築士事務所 大西麻貴+ 百田有希/ o+h 協同主宰) |
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竹内 清秀 (日本電気硝子株式会社 執行役員 電気硝子 建材株式会社 社長) |
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コーディネーター | 五十嵐 太郎 (建築評論家・東北大学教授) |
近代以降、ガラスブロックは様々な局面で使われ、モダニズムが新しい空間を形成することに貢献してきた。例えば、オットー・ワグナーによるウィーン郵便貯金局では地下に光をもたらす床面に、ピエール・シャローによるガラスの家では大胆に壁に用いて光のスクリーンを出現させた。一般的にガラスブロックは、省エネルギー、快適性、安全性、メンテナンスフリーなどの機能性にすぐれている。が、一方でガラスブロックは、四角い単位を組み合わせた厚い壁のイメージも定着し、その使い方があまりアップデートされていない。また冷たくて硬いと感じる人もいるかもしれない。そこで21世紀に入り、真壁智治らが注目し、シンポジウムや書籍を通じて、建築界でもよく語られるようになったキーワードのひとつである「かわいい」という形容詞と接続させることによって、なにが出てくるのかわからない、ガラスブロックの刷新をはかろうとするのが、今回の課題である。
「かわいい」と「ガラスブロック」。語感は良いのだけれど、意外な言葉が出会うことで、いったん旧来のガラスブロックをリセットし、デザインの想像力を飛翔できるのではないか。おそらく、形態や色彩といったプロダクトのレベル、組み合わせ方や建築において使う箇所、あるいは建築の用途など、いろいろなバリエーションが考えうるだろう。もっと人々に愛される「かわいいガラスブロック」の建築を提示してほしい。
2017年11月7日に行われた審査会にて。
左から古谷氏、五十嵐氏、大西氏、竹内氏、中村氏。
「かわいい」にはいろんなイメージがあるが、後ろに「ガラスブロック」がつくと途端に歯応えのあるものになる。そこにこのテーマの面白さがあり、最優秀賞は通り一遍のかわいさに終わらず、一歩抜きん出ていた。全部をガラスのピースにしないところもいい。
優秀賞は柔らかいガラスブロックができないかという発想の中ではふわふわしたイメージが秀逸。
入選では、同じく柔らかくしかも水面に浮かぶ「魔法の絨毯」に共感した。
ガラスブロックは、そのシンプルさや完成度の高さ故に、使い方の発想の転換やデザインそのものの大胆な更新が難しい素材ですが、「かわいい」というテーマが加わることで高いハードルを楽しげに超えていく案が数多く提案されました。
特に最優秀賞の山内裕斗案は、四角いガラスブロックをお互いにかみ合う形にわずかに変形するという具体的でシンプルな方法によって、四角いガラスブロックには無い自由で豊かな空間を夢見させてくれる提案でした。
ガラスブロックの持つ、固く冷たいイメージ、分節されたイメージ、工業製品としてのイメージを覆す、もはやこれはガラスブロックなのだろうか?というような提案に心ひかれた。特に、「手作りできるガラスブロック」は、手作りからは最も遠いと思っていたものを自らつくるという驚きがあり、泥を固めた日乾し煉瓦造のような素朴な建築を思い浮かべた。
「めがもふもふ」も巨大でやわらかい、綿菓子のような、あるいは生き物のようなブロックの提案で、魅力的に感じた。
人によって解釈が異なる「かわいい」という言葉に「ガラスブロック」を結びつけた難しい課題でしたが、「がらがら がらスティック」のように実現できそうな提案から、「めがもふもふ」のように私どもガラス屋の意表を突く作品まで、その方向性はまさに多種多様で、夢のある「かわいい」世界のご提案に感銘を受けながらの楽しい審査となりました。
今後も当コンペティションが、ガラス製品の可能性発見の良い機会となることに期待しつつ、受賞者の皆様のますますのご活躍を心よりお祈り申し上げます。
アイデア・コンぺでは前代未聞の「かわいい」をキーワードに掲げたことで、通常よりもやわらかい雰囲気の作品が多かったように思う。
既存のガラス・ブロックに対し、かたち、色彩、サイズ、 変形可能性、水に浮かぶなどの建築的なアプローチが提示され、入選案もバリエーションに富むものとなった。そのなかで最優秀案は、構法や空間体験もセットにしたバランスの良いアイデアゆえに、一次審査のときから最多の得票を獲得していた。