“ガラスを超えるガラス”ガラスの常識を覆した結晶化ガラス!

ガラスの常識を覆した結晶化ガラス!

生活シーンから最先端技術までー
“ガラスを超えるガラス”が未来をひらく。

ガラスといえば、何をイメージされるでしょうか。「透明」「きれい」「硬い」「もろい」「空気を通さない」「薬品に強い」―
さまざまな特性を持つガラスですが、たとえば、お気に入りのガラスのコップにうっかり熱湯を注いでしまい、割ってしまったという方もいるのではないでしょうか。ガラスは「急激な温度変化に弱い」。

しかし、そんな常識を覆す画期的なガラスがあります。それが “ガラスを超えるガラス”といわれる「結晶化ガラス」です。

ガラスの特性を大変革した結晶化ガラス。

800℃に熱して冷水をかけても割れない

結晶化ガラスは、ガラスと結晶の複合体です。もともとガラスは非晶質で結晶を持たないのですが、特殊組成のガラスを再加熱し、ガラス内部に結晶を均一に析出させることで、従来のガラスでは得られなかった特性が備わります。

その代表的な特性が、急激な温度変化(サーマルショック)に対する強さ。ガラスコップに熱湯を注ぐと割れてしまうのは、コップの内面が急激に温められて膨張する一方で、外面はすぐに熱が伝わらずに膨張しない、つまり、ひとつのコップに「伸びようとする力」と「とどまろうとする力」が一度に働くためです。

しかし結晶化ガラスなら、ガラス内の結晶の作用によってほとんど膨張することがないため、割れることがありません。

世界をリードする日本電気硝子の結晶化技術

結晶化ガラスとは本来は結晶を持たないガラスを熱処理することにより、内部に約30ナノメートルという微細な結晶を析出させたガラス。「ガラスセラミックス」とも呼ばれます。温度が上がると縮む性質を持つ結晶を使用することでガラス質の膨張がお互いに打ち消し合い、熱膨張係数をほぼゼロにすることができるのです。

日本電気硝子は、その製品開発にいち早く成功したリーディング企業。結晶核の均一な生成と結晶化をコントロールする独自技術を駆使し、“ガラスを超えるガラス”といわれる結晶化ガラスの可能性を次々と切り拓いてきました。

ナノ=10億分の1

低膨張結晶化ガラス〈ネオセラム〉は、
日々の暮らしで役立っている。

私たち日本電気硝子が結晶化技術を用いて試行錯誤の末、膨張率の低い結晶化ガラスを開発したのは1962年のこと。熱変化による膨張が極めて小さいため「急熱急冷に強い」特性をもつこのガラスは〈ネオセラム〉と名付けられました。

直火で加熱して水をかけても割れないほど高温やサーマルショックに強い特性を持つ〈ネオセラム〉は、食器から電子レンジのターンテーブルやトレイ、薪ストーブや暖炉の前面窓、オーブントースターのヒーターカバーなど、すでに私たちの日々の暮らしで役立っています。また、調理器トッププレート用の結晶化ガラスはStellaShine®(ステラシャイン)の名称で、多くのIHクッキングヒーターやガス調理器に使われています。

〈ネオセラム〉を使用した薪ストーブ窓
〈ネオセラム〉を使用した薪ストーブ窓
StellaShine®を使用したガス調理器
StellaShine®を使用したガス調理器

火災時の「安全」と「安心」を確保するガラス、
ファイアライト®

私たちを火災から守る結晶化ガラスもあります。火災発生時の高温に耐え、スプリンクラーの放水による急冷にも割れない防火ガラス、それが今年販売30周年を迎える超耐熱結晶化ガラス ファイアライト®です。まったくシースルーのガラス防火戸の誕生は、視界を遮る鉄製と網入りガラスの防火戸しかなかった当時、大変な注目を集め、建築デザインの可能性を大きく変えました。

東京消防庁の火災実験への採用や、アメリカを代表する安全認証であるUL規格にも適合するなど、優れた耐熱衝撃性で高い防火性能を実証してきたファイアライト®。日常では普通のガラス同様に透明でクリア。火災発生時には、防火シャッターのように視界を閉ざすことなく避難経路を確保し、そして消火活動の際は、建物内部の状態が確認できることで迅速で的確な対応を可能にする、“日常”と“非日常”の安心を守る防火ガラスです。

ファイアライト®(厚さ5mm)
耐熱強化ガラス(厚さ8mm)

消防研究所・東京大学・(株)イー・アール・エス・日本電気硝子(株)による共同研究より

防火ガラス実証実験 詳細

最近ではこのファイアライト®を使用した木製サッシ三層ガラス窓も登場。住宅密集地の火災において窓が最大の弱点となるのは、熱によって割れたガラス窓から火の粉や炎が噴き出し、隣家へと火が燃え移ってしまうためですが、この延焼をシャットアウトする住宅向け防火窓(防火設備認定品)用として、ファイアライト®の採用が始まっています。

また、2枚のファイアライト®を特殊樹脂で貼りあわせたファイアライトプラス®は、急熱・急冷に強く、さらに人や物の衝突、あるいは地震の発生などで万が一破損しても、ガラス片の飛散・脱落の心配がほとんどない衝撃安全性を備えた唯一の特定防火設備用ガラス。人が多く集まる交通施設、教育施設などに最適なガラスとして高い評価をいただいています。

〈ネオセラム〉を使用した薪ストーブ窓
ファイアライト®が採用された、
シンガポールのマリーナベイ・サンズ
StellaShine®を使用したガス調理器
ファイアライトプラス®が採用された、
バスタ新宿(新宿南口交通ターミナル)
〈ネオセラム〉を使用した薪ストーブ窓
ファイアライトプラス®が採用された、
JR川崎駅
StellaShine®を使用したガス調理器
スウェーデンハウス木製サッシ三層ガラス窓の断面図

ファイアライト®
30周年 特設サイト

ファイアライト施工写真ギャラリー

ついに熱膨張係数ゼロを実現、
結晶化ガラスの進歩は止まらない。

活躍の場を広げ続ける結晶化ガラスが、さらに進化しました。周囲の温度変化に対して伸び縮みすることのない、熱膨張係数がゼロのガラス―その名もZERØ®(ゼロ)です。

厳密なゼロ膨張の実現には、結晶とガラス質の割合を最適化することが必要です。私たちは原料となるガラスの成分比率を徹底的に研究するとともに、結晶化プロセスにおける温度制御をより厳密かつ正確に行う技術の確立に成功しました。まさにZERØ®は低膨張ガラスではなくゼロ膨張ガラスであり、精密さや寸法安定性などが求められる先端分野での活躍が期待されています。

たとえば、光通信や精密機器分野における構成部品、超精密スケールといった測定機器などへの応用のほか、温度変化によるわずかな誤差も許されない航空機のモーションセンサーや過酷な宇宙空間で活躍する人工衛星に搭載されるさまざまなデバイスなど、航空宇宙分野へもその可能性を広げていこうとしています。

結晶化ガラスZERØ®は厳密なゼロ膨張を実現
結晶化ガラスZERØ®は厳密なゼロ膨張を実現
ゼロ膨張ガラスZERØ®
ゼロ膨張ガラスZERØ®

ネオパリエ®が採用された、新宿駅西口4号街路

微細な針状結晶が深みのある表情をもたらす
結晶化ガラス建材 ネオパリエ®

ネオパリエ®は、大理石のような柔らかな風合いを持ちながら、天然石よりも耐水性・耐酸性・耐アルカリ性などに優れた結晶化ガラス建材です。

吸水率がゼロで水がしみこまないため汚れや風化に強く、竣工当時の美しさを失いません。凍害の心配もまったくありません。ガラス質ですので加熱・軟化させることで曲面板もできます。

国内はもちろん海外のホテルや商業建築の外壁、地下鉄・駅の内壁などに広く採用されている、艶やかなテクスチュアが映える内外装材のロングセラーです。

ネオパリエ施工写真ギャラリー

特殊ガラスのエキスパートとして、
“高機能ガラス”で未来をひらく。

私たちは特殊ガラスのエキスパートとして材料設計や溶融、成形、加工などの基盤技術をさらに高めるとともに、結晶化や複合化、精密加工などの応用技術をいっそう究めて融合することで、これからも時代が求める最先端のガラスを次々に誕生させていきます。

“高機能ガラス”の開発を通じて未来を切り拓く。私たち日本電気硝子のチャレンジはまだまだ続きます。

研究開発トップに戻る