リケジョが滋賀の未来を切り拓く!? 理系的思考のススメ
日本電気硝子(略称、“NEG”)では、2007年より滋賀県立大学との間で包括協定を締結し、寄附講座の開設や共同研究などの連携事業に取り組んでいます。また、2020年からは滋賀県立大学が取り組む国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)主管の「女子中高生の理系進路選択支援プログラム」に共同機関として参画。「職場交流体験」の実施を通じて、県内の女子中高生に理系女子社員が活躍する姿や理系的思考の面白さを知ってもらうとともに、地域人材の育成に貢献しています。
日本の理系女性研究者の割合はOECD加盟国の中で最下位
日本の理系分野における女性研究者の比率はわずかに増加しつつあるものの、経済協力開発機構(OECD)の調査によると、STEM(科学・技術・工学・数学)分野に占める女性の割合が、日本はOECD加盟国の中で最も低く、女性の理工系人材の育成が遅れている実態が浮き彫りになっています。また、文部科学省の「女子生徒等の理工系分野への進路選択における地域性についての調査研究」の都道府県別データを見ると、滋賀県の「工学分野入学者に占める女性比率」は近畿最下位で、全国的にも低いという結果になっています。
理工系分野における女性人材が少ない理由としては、まわりの生徒の進学動向や、保護者・教員の理系進路選択への理解不足、ロールモデルに接する機会が少ないなど、周囲の環境が影響していると考えられています。
県内の女子中高生に理系的思考の面白さを知ってもらいたい
世界有数の特殊ガラスメーカーであるNEGとしても、このような現状を深刻に捉え、次世代育成支援のひとつとして、滋賀県立大学が実施する「女子中高生の理系進路選択支援プログラム」に2020年度から参画することにしました。
もともと滋賀県立大学とは、2007年から包括協定を締結し、「ガラスの割れ発生メカニズムの解明」「ガラス融液の基礎的研究」など、ガラス製造に関する基盤技術を共同で研究するとともに、寄附講座を設置し、ガラス研究者・技術者の人材育成に努めてきました。そんな中、滋賀県立大学がJSTの「女子中高生の理系進路選択支援プログラム」に応募するに際し、当社へ共同機関として参画依頼がありました。
理系進路に関する興味や知識のレベルに合わせて参加できるよう「理系的思考体験」「職場交流体験」「キャリアスキル体験」の3つプログラムが用意されており、NEGでは県内企業が担う「職場交流体験」を実施することになりました。理系女子社員が活躍する姿を見てもらうことで、県内の女子中高生にモノづくりや理系的思考の面白さ、理系分野には幅広い職業の選択肢があることなどを知ってもらい、理系進路選択へつなげてほしいと考えています。
これまで滋賀県立大学はJSTのこのプログラムに2020年~2021年度、2022年~2023年度と2度の採択を受け実施してきましたが、今年度からは大学独自のプログラムとして新たにスタートさせました。「ワクワクするガラス開発の裏側を知ろう!」をテーマに実施した今年の当社の「職場交流体験」には、中高の女子生徒11名、保護者8名の合計19名が参加しました。
実際に見て触れて、ガラスのユニークさと無限の可能性を感じてもらう
はじめに、ガラスの基礎講座として、人類がつくった最古の素材であるガラスの歴史について動画で紹介。黒曜石からはじまり、人類の生活、芸術、科学を支えてきた素材であるガラスは、産業革命とともに大きく発展しました。電子部品や液晶ディスプレイなどに使われる電気ガラスや、自動車部品などに使われるガラス繊維、医療用ガラスや光ファイバなど、特殊ガラスとしてさまざまな製品に活用されています。
基礎講座の後は、P&P技術センター(研究開発拠点)とショールームを見学。さまざまな部材を強く軽くするガラスの糸「ガラスファイバー」や、鉄球を落としても割れない「化学強化ガラス」、反射せずに中に入れたものがクリアに見える「見えないガラス®」、ティアラなどの宝飾品に使用できる「超高屈折率ガラス」など、特殊ガラスを使った製品を間近に見て触れてもらうことで、ガラスはさまざまな形で社会の多くの場所で役立っているユニークな素材であり、無限の可能性があることを感じてもらいました。
プログラムの後半には、理系女子社員との交流会を行い、どんな学生時代を送っていたのか、女性研究者としてどんな仕事をしているのかなど、生の声を聞いてもらい、リケジョのリアルを知っていただく良い機会となりました。
さまざまな体験を通じて自分の好きなものを見つけてほしい
イベントの最後には、滋賀県立大学の坂本教授から「皆さんには、やりたいことを見つけて、これがしたいから理系で頑張る!というポジティブな選択をしてほしい。そのためにも、さまざまな体験を通じて自分の好きなものを見つけてほしい」と参加の生徒たちにエールを送られました。
本プログラムは、地域活性化のための取り組みのひとつとして、地元産業界、経済界からも高い期待をされています。「今後もこの活動を続け、滋賀県の理系進路選択支援の拠点として、全県的な取り組みへ成長させたいと考えています」と滋賀県立大学の田邉教授は語ります。
参加した生徒からは、「ガラスに別の素材を混ぜたらいろいろなものが作れると知って驚いた」「文系、理系の進路は未定だけど、自分の得意な国語は理系の学びにも活かせるという話を聞け、選択肢が広がった気がして嬉しかった」「進路について改めて考えるきっかけになった」といった感想が寄せられました。また、アンケートによると、参加者のうち約3割は理系・文系で迷っている生徒でしたが、参加者全員が今後、理系の進路を前向きに選択しようと思うようになったと回答してくれました。
NEGではこれからも「学び」を「働く」につなげる、産学連携による取り組みを通じて、ガラス産業の発展と地域人材の育成に努めていきたいと考えています。