世界最大級の光工学系展示会「SPIE Photonics West」への出展、その舞台裏

世界最大級の光工学系の国際展示会「SPIE Photonics West 2025(以下、Photonics West)」が2025年1月28日(火)~30日(木)に開催されました。日本電気硝子(以下、NEG)は光学部品の販売拡大と認知度向上を目的に出展。例年以上の集客を実現し、問い合わせ件数も増えるなどの成果を上げました。ここでは、現地に赴き展示会を担当されたマーケティング部のTさんに、出展までの取り組みや当日の様子などを聞きました。
Tさんは2023年にNEGに入社し、電子部品事業部、ガラス繊維事業部製品のマーケティングを担当しています。

世界最大級の光工学の展示会「SPIE Photonics West」
Photonics Westは国際光工学会(SPIE:The International Society for Optical Engineering)が主催し、毎年1月末から2月初め頃にサンフランシスコのモスコーニ・センター(Moscone Center)で開催している展示会です。世界中の産業用レーザーや加工用レーザー、光学機器、研究機器、測定機器などのメーカーが、自社の製品やサービスをアピールするために出展します。

NEGも例年出展しており、2025年は光学製品をテーマに展示製品を厳選。カルコゲナイドガラス(Chalcogenide Glass)、光アイソレーター(Optical Isolator)、ガラスリボン(Glass-ribbon)の3製品を大きく訴求し、サブ製品も6つ展示しました。



入念な出展準備と情報発信
――Photonics Westに出展した狙いや、出展に際してのコンセプトなどを改めて教えてください。
Tさん「Photonics Westには光学部品に関心を持つメーカーや代理店の人、バイヤーなどが世界中から集まります。日本のメーカーも当社以外にも複数社が出展していて、会場には日本人の来場者も少なくありません。
当社は2014年頃から出展しており、コロナ禍の期間を除いて毎年出展しています。今年は初めてPhotonics Westのスポンサーになり、パビリオンの中にブースを設けました。昨年はブースの位置が悪く、周辺の人通りが少なくて苦戦したと前任者から聞いていましたが、今年は人通りの多い場所が得られたので良かったです。ジャパン・パビリオンでは会社ロゴが展示会場やパンフレットに掲載されるので、その分でも目立つことができました。


ブースのコンセプトは、通りがかりの人に当社が何の会社なのかがパッと見て分かるようにすることです。壁面はなるべくシンプルにして、製品写真は大きく見せ、文字は製品カテゴリーとアプリケーションの紹介程度に抑えました」

――出展の準備はいつ頃からどのように始めましたか?また、出展にあたって事前の周知はどのように行いましたか?
Tさん「展示会の3か月前頃に社内でキックオフを実施しました。2024年9月か10月頃だったと思います。その頃に出展製品と壁面の装飾業者の選定を行いました。展示製品は営業部が選定し、展示方法についても営業部の担当者と相談しながら決めていきました。
Photonics Westは光工学系の専門的な分野で集まる展示会なので、展示の候補になる製品はだいたい決まっています。製品の選定よりも、展示の配置やどの製品を大きく扱うかといった見せ方をいろいろ相談しました。
ショーケースや商談テーブルをどう配置するかといったブースのレイアウトが決まると、次は各製品の展示方法、ノベルティなどを検討して準備します。展示会の1か月前には展示品等の荷物をアメリカに発送しています。
周知については、展示会の2週間前からLinkedInに週3回の頻度で告知を投稿しました。カルコゲナイドガラスと光アイソレーターは展示会の前の週に学会発表もあり、学会で知った人に見てもらいたいという思いもありました。これらは展示会ではメインで展示することに決めてあったので、特別に製品紹介ページも作成して投稿しました」

会期中の運営体制と感じた手応え
――出展期間中は何人くらいでどのようなスケジュールで動きましたか?またどのように役割を分担しましたか?
Tさん「Photonics Westの前の週に別の事業部が担当する展示会がアメリカで開催されていて、私はそちらにも参加したのでアメリカに2週間滞在しました。この長期間の滞在は、展示会に参加するための出張としては社内でもあまりないケースです。
Photonics Westには営業部所属の者も含め、英語がある程度話せる十数名が派遣されました。開催日前日の1月27日に会場入りしてブースの設営を行い、翌28日から30日まで、ブースで来訪者の対応や他社ブースの視察などをしました。
私はブースの準備が担当で、当日の役割の中心は展示製品やノベルティなどの管理です。このため、当日の個別の来場者への対応は営業部と事業部の製造メンバーが行い、私達マーケティング部は、競合製品や最新技術動向を把握するために積極的に他社ブースを視察しました」
――来場者の反応はいかがでしたか?
Tさん「ブースの前を通りがかり、製品に興味を持って足を止めてくれた人が多いです。ジャパン・パビリオン内にブースを設けたこともあり、日本人の来場者も予想していたより多かったです。
昨年よりも人通りの多い位置で出展でき、学会発表やリリースもあったことから、ブース来訪者は昨年より増加しました。会期中の問い合わせの半分は光アイソレーターに関する内容でした。他素材や他社製品の代替検討など、有力な問い合わせもありました」

初の海外出張での試行錯誤
――出展の準備で大変だったことや苦労したことはありますか?
Tさん「私は海外の展示会を担当するのはこれが初めてでした。昨年参加した営業部の担当者に会場の雰囲気などは聞きましたが、ブースをどのようにデザインすれば来場者の目を引いて、展示物も見やすくなるのかのイメージまでは掴めず、苦労しました。
国内の展示会に出展するときは、装飾業者にコンセプトなどを伝えれば後はある程度お任せできるのですが、海外の展示会に出展する場合は装飾業者に細部まで指示する必要があります。ショーケースの配置や壁面をどうするかなど、ブース全体のレイアウトを考えて人員の配置や配布物なども1つずつ丁寧に検討しました。

そのほか苦労した点は、やはり現地では基本的に英語での会話になることです。日常会話ならともかく、会場では専門用語が多い会話になるので大変でした」
――今後に活かす反省点として挙がったことはありますか?
Tさん「実は壁面の仕上がりに想定していたイメージとのズレが少しありました。展示会の運営会社とのやりとりの中で壁面グラフィックのデータサイズに関する行き違いがあり、ロゴの余白が目立ってしまったのです。大きな問題にはなりませんでしたが反省点の1つです。
ほかにはチラシのスタンドと展示品が離れていたことが不便に感じました。荷物置き場がなかったため、ストックスペースは別途用意する必要があるというのも気付いた点です」
――他社ブースを視察していて気が付くことはありましたか?
Tさん「競合の製品も見ることができましたし、技術トレンドとしてバイオフォトニクス、レーザー、量子、AR/VR関連の製品はとても興味深く見学しました。光アイソレーターの展示が予想以上に多く、他社のラインナップも豊富でした。見せ方の洗練されたブースもあって、そうしたものは今後の参考になりました。
海外展示会は簡易的なブースが多いので、その中で展示品をどううまく見せるかが重要だと思います。シンプルなショーケースだと、展示台に製品を設置するだけになってしまうので、壁面グラフィックやパネルの内容、POPなどは工夫が必要だと思いました。
他社ブースを見ていて自社の強みに感じた部分は、お客様の要望に合わせられるところです。個別に丁寧に対応できるところも訴求できるポイントになると感じました」

――初の海外出張ということで、展示会以外のことでも何か気が付いたことがあれば教えてください。
Tさん「営業部長からはせっかくアメリカに来たのだから、アメリカでしか経験できないことを経験しておくようにとアドバイスされました。会場はサンフランシスコのど真ん中で、日本よりも進んだテクノロジー感があって面白かったです。
印象的だったのは自動運転車で、実際に乗ってみると人間が運転するよりも上手なのではないかと感じたほど運転が滑らかでした。あとはハンバーガーショップでハンバーガーも食べました。凄く大きかったです!(笑)
大変だったのはやはり時差です。日本とサンフランシスコでは16時間ずれています。私は他の展示会のために東海岸にも移動しました。そちらは13時間のずれです。体調を崩さないように体調管理には結構神経を使いました」

国内外での経験を次なる価値創出へ
海外市場における認知拡大と技術力の訴求を目的に出展した今回のPhotonics West。現場での発見や反響、運営上の学びは、今後の展示戦略や製品開発、顧客対応においても大きな糧となります。ビジネスを国際的に展開するNEGは、Photonics Westをはじめとする国内外の展示会を通じて、製品の認知拡大はもちろん、技術力やブランドへの信頼の発信にも継続的に取り組んでいます。
今回の出展で入社2年目のTさんが初めて海外出張を任されるなど、経験の有無にかかわらず挑戦の機会を与えられる社風も、NEGの大きな強みのひとつです。これからも社員一人ひとりの実践を通じて、グローバルに価値を届ける挑戦を続けていきます。