意匠性の高い建築を支える素材ー「WizARG®」のグローバル市場開拓
インド・ムンバイの玄関口であるチャトラパティ・シヴァージー国際空港。
そのターミナル内に広がる、流れるような曲面の天井デザインは、空港建築としても高い意匠性が評価されています。
この曲面形状を実現するために使われているのが、「GRC(ガラス繊維補強コンクリート)」です。GRCは、セメントモルタルまたはフレッシュコンクリートを耐アルカリ性ガラスファイバで補強することで建築デザインの自由度を高めることができる複合材料です。
日本電気硝子(NEG)は、このGRCに使われる耐アルカリガラスファイバ「WizARG®」を手がけています。WizARG®は、軽さと強さを両立させる素材として、建築・土木分野の可能性を広げています。
では、実際の営業現場ではどのように顧客と向き合い、シェア拡大を目指しているのでしょうか。今回は、営業担当・山城淳さんに、現地での営業活動や提案の工夫、市場を切り拓く姿勢について伺いました。
世界中で3社がしのぎを削る特殊な市場
―山城さんの営業担当領域と業務内容を教えてください。現在はどのような製品を担当され、どんな業務をされているのですか?
山城さん「主に海外のお客さまを中心に、耐アルカリガラスファイバ「WizARG®」の営業を担当しています。現在、耐アルカリガラスファイバを製造しているメーカーは、当社とアメリカ系中国企業、中国ローカルの企業の3社があり、市場ではこの3社がしのぎを削っている状況です。
「WizARG®」などの耐アルカリガラスファイバは、コンクリートの補強に使用される材料です。主にGRCに使用されるため、世界中のGRCメーカーが主要なお客さまになります。GRCは鉄筋を入れたものに比べて厚みを薄くできるメリットがあり、曲線を多用するような意匠性の高い建築物に使用されます。そのため、インドや中東など、モスクに代表されるイスラム建築の多い地域での需要が伸びています。
ただ近年、競合の台頭など様々な要因が重なり、当社としては少し苦戦を強いられていました。そこで昨年、マーケティング部と一緒に製品を「WizARG®」と名付け、SNSでの情報発信なども強化しながら、知名度の向上とシェア拡大のための活動を進めています。」
耐アルカリガラスファイバ「WizARG®」について
WizARG®は、ガラス成分に高濃度のジルコニアを含んだ耐アルカリ性、耐酸性に優れたガラスファイバです。硬さや柔軟性、太さなどに幅広いバリエーションがあり、GRCパネルの製造からコンクリートのひび割れ防止やインフラの補修まで、多様な用途に対応しています。建材の厚みや重量を抑えられるため、構造的な自由度が求められる建築にも用いられています。
他社に負けない品質を
手ごろな価格で使えるメリットを強調
—営業をしていく上でどのような工夫をしていますか?
山城さん「ガラスファイバは見た目が同じなので、どうしても価格の話になりがちです。しかし、いざ当社の製品を使ってみると、やはり全然違うという声をよくいただきます。また当社は他社に比べて製品ラインアップが豊富でほとんどのニーズに対応できるうえ、長さの調整などカスタマイズの要望が出ても、柔軟に対応できる強みがあります。
また価格の話が先行しがちな場合には、お客さまのニーズに合ったサンプルを作り、一度使ってもらうような提案をしています。以前サンプルを提供したメーカーさまから、直後に大量のオーダーをいただいたことがあります。話を聞くと現場の方から「WizARG®」の方が断然良いという声があがり採用に至ったということでした。その時は「WizARG®」の優位性とともに、サンプルでの提案方法は有効だと再認識したのを覚えています。
一方で価格についても地道な提案を続けています。当社製品は過去のイメージで、どうしても高価だと思っておられるお客さまが少なくありません。提案に行った先で「みんながみんな、メルセデスは買わないよ」と言われたほど、高価なイメージが先行してしまっているのです。工場の方でも製造工程の改善など、かなり頑張ってコストダウンを進めてくれています。
価格重視のお客さまに対しては、過去の高価なイメージのアップデートも含め、品質の良いものを手ごろな価格で使っていただけるようになったことをアピールするようにしています。」
お客さまとも「仲良く一緒に頑張ろう」というスタンスで
—営業スタイルやお客さまとの関係づくりで大切にされていること、そして今後の目標について教えてください。
山城さん「私が提案の際に気を付けているのは、商談するお客さまの特性を把握し、タイミングよく話を切り出すことです。
お客さま訪問の際は、パートナーとして動いているGRC製造機器メーカーの方と同行することが多いのですが、前日にその方たちと打ち合わせをするんです。「僕がこう言うと相手はこう来るから、その時君はこう言ってくれ」というように商談をシミュレーションするのですが、それがハマった時はとても気分が良いですね。
私自身、ヨーロッパ駐在の経験から人生においてはプライベートが一番という考えを持っていますが、仕事も楽しくやりたいと思っています。だからお客さまと友達になることも多いですね。私は意見を言う方なので議論になることはありますが、いがみ合いながら商売するのが一番嫌なんです。これまでも「仲良く一緒に頑張ろうよ」という感じでやってきたので、このスタンスは今後も続けていきます。そこで信頼関係ができていれば、結局仕事の面でもメリットは多いですから。
そのうえで営業としては、細かな市場調査で情報をアップデートしながら地道に提案を続け、現在の市場シェアを着実に拡大していくことが、今の目標です。」
インタビューした社員
ガラス繊維事業本部 営業部 山城 淳さん
2023 年キャリア採用。学生時代の留学をきっかけに海外での仕事に興味を持ち、大学卒業後は海外駐在ができる企業に就職。インドネシアやドイツでの駐在経験を持つ。NEG 入社以来、耐アルカリガラスファイバ「WizARG®」の営業を担当。