NEGの『微細凹凸技術』がマンガを変える!?――人気マンガ家『うめ』に聞く

2026.04.08(2026.04.09更新)
nanoWaveのiPadで取材に同席いただいたNEGの方の制服姿を描いてもらった。2種類のナノレベルの凹凸で『描き味』を演出したというガラスフィルムを『うめ』は高く評価。

文:村上タクタ

『南緯六〇度線の約束』をビッグコミックオリジナルに連載するマンガ家ユニット『うめ』の、小沢高広さん(左)と、妹尾朝子さん(右)に話を聞いた。

マンガ家『うめ』の作画担当、妹尾朝子さんにNEGがnanoWave™加工を施したiPad用のガラスフィルムを使ってもらった。2種類のナノレベルの凹凸で『描き味』を演出したというガラスフィルムを、妹尾さんは「曲線が描きやすいし、ペン先の摩耗も少ない気がする」と高く評価する。

「すごく気に入りました。ペン先のタッチの好みはけっこう人によって違うのですけど、私はツルツルしちゃうとペン先が滑る感じがするので、摩擦が強い方が好きなんです」というのは、マンガ家ユニット『うめ』の作画担当、妹尾朝子さん。ストーリー担当の小沢高広さんに話を聞いた。ふたりはご夫婦でもある。『東京トイボックス』『STEVES(スティーブス)』『南緯六〇度線の約束』などのヒット作をお持ちで、個性豊かで動きを感じさせるキャラクター描写には定評がある。
今回、妹尾さんにはNEGの微細凹凸加工『nanoWave™』を施したiPad用ガラスフィルムを使っていただき、感想をうかがった。

今や多くのマンガ家はデジタルで作画している

今や、マンガは世界に誇れる日本の文化・産業となっているが、現在、多くのマンガがiPadを始めとしたタブレットで描かれていることはご存じだろうか?

現在のマンガ家の多くはiPadにApple Pencilでマンガを描く。描き味を大きく左右するのが表面に貼る保護フィルムだ。

もちろん、以前はやや厚めのケント紙などに、つけペン(インクに浸けながら描くペン)で描くのが王道だった。しかし、2000年代前半からパソコンとタブレットで描く人が増えてきた。

最初は、線画は紙にペンで描いて、それをスキャンして、仕上げ(トーンや効果線など)を行うという形式が多かったが、次第に線画もデジタルで描くという人が増えてきた。当初はデスクトップパソコンに、ワコムのペンタブレットを使っているというのがスタンダードだった。

そこに大きな変化が起こったのは2017年のこと。マンガを描くためのデファクトスタンダードアプリであるClip Studio Paint(通称クリスタ)がiPadに対応したのだ。ワコムの液晶タブレットは27インチモデルまであるため、仕事場で描くならその方が便利だが、iPadを使えば仕事場にこもらずとも、リビングでもカフェでもどこでも描ける。データをクラウド経由で共有すれば、1ページごと、アシスタントが分業して作業できるなどメリットも多い。

もともとは、マンガ家先生の作業場に、アシスタントが数名詰めて、それぞれ背景を描いたり、トーンを貼ったり、効果線を描いたり……という制作スタイルだったのが、それぞれが個別に作業することが可能になったのだ。

撮影現場で実際に1枚絵
撮影現場で実際に1枚絵を描いてもらったが、ものの数分で人物が描き上がってくるのは魔法のよう。月に50ページ、平均6コマだとして、各コマに2~3人の人がいるとすれば600~900人の人を1カ月に描くことになるのだそうだ。

正確な統計データはないが、現在紙にペン入れしているのはごくわずかな超巨匠マンガ家だけで、多くがワコムのペンタブレットか、iPadで、クリスタを使って描くというのがマンガ制作の現場の実態となっているという。

妹尾さんは、アマチュア時代とプロになってから6~7年ぐらいはペンと紙で描いていて、その後2007~8年ぐらいからパソコンと液晶タブレットで描くようになったという。当時、モーニングに連載していて、連載陣の中では一番早くにデジタル化されたのだという。

問題になるのが紙とは違う『ペンタッチ』

というところで、ようやく本題なのだが、紙とペンで描いていたマンガ家の方が、デジタルに移行する際に違和感があるのが、『ペンタッチ』だ。

マンガ家コミュニティの中でも人脈の広いうめさん
マンガ家コミュニティの中でも人脈の広いうめさんに、みなさんがどのようにして絵を描いているかをうかがうことができた。

元々紙で描いていた時でも、どこのケント紙を使うか、それぞれ何kgの厚みのものを使うか(紙の厚さは、一定量の重さで表現する)、ペン先は、Gペンなのか、丸ペンなのか、スクールペンなのか……と、こだわってきたのが表現者としてのマンガ家だ。誰もがそれぞれのマンガ家の方の絵を見分けることができるのも、ひとりひとりのマンガ家の方のタッチというものが表現に表れているからだ。

たとえばGペンであれば力を入れると太くなるし、抜くと細い線が引ける。丸ペンなら繊細な線が描けるし、スクールペンなら均質な線が描ける。それに紙の性質が組み合わさって、たとえばケント紙なら比較的滑りが良かったりする。

それをもって長年マンガを描いていた人にとって、iPadという板状のガラスの上にApple Pencilというプラスチックのペン先で絵を描くのは違和感がある。ペンと紙に比べて滑りが良過ぎるし、感触が硬質でタッチも違う。

うめさんの使うペン先。
うめさんの使うペン先。アップル純正とは違う先端のチップを差し替えられるものを使っているとのこと。

その対策として登場したのがいわゆる『ペーパーライクフィルム』だ。スマホの保護フィルムのようなもので、表面がザラザラしており、紙のようなタッチを提供してくれる。いろいろな種類があって、多くのマンガ家はさまざまなペーパーライクフィルムを試して自分好みのものを探しているという。

ナノレベルの2種類の凹凸を組み合わせたnanoWave™

NEGが開発した新しいiPad用ガラスフィルムは、nanoWave™という加工でペンと紙のような感覚を生み出す新技術。さまざまな粒状感の加工が可能なので、理想のタッチが得られ、ペン先も削れにくい。また、ガラスの方がPET素材より透明度が高いので、色味がほとんど影響を受けない。理想的な技術なのだ。

「ペーパーライクフィルムにもいろいろあって、人によって好みのものは違うと思います」と妹尾さん。

一度貼ると貼り替えにくいし、それなりの価格がするものだから、いろいろな製品を試すのは難しい。それでも、多くの人はマンガ家同士で情報交換しながら、自分好みのフィルムを探すのだそうだ。

「私は、紙で描いていた頃のケント紙に近い、比較的ザラザラしたものよりも、少し平滑な感触のほうが好きなのかもしれません。使うペンや筆圧にもよりますが、もっと紙のザラザラ感があるシートを好む方もいるかもしれません」

また、紙を経ずに最近描きはじめた若いマンガ家は、タブレットそのままに近いツルツルした描き味を好むかもしれないとのこと。

妹尾さんはサラサラとした滑らかなタッチのものが好み
妹尾さんは、どちらかといえばサラサラとした滑らかなタッチのものが好みだという。

nanoWave™の技術は、2017年頃に開発着手された。2020年に加工面積の大面積化、均質加工が可能になり、2025年にさらに大きなサイズの加工が可能になり製品化に近づいた。

どうやって加工するかは「企業秘密」ではあるが、2種類のサイズの凹凸を付けることで、滑らかさと引っ掛かり(グリップ感)を作り出すことができる。これにより、マンガ家の求めるタッチを実現できるというわけだ。

大きい方の凹凸は高さ10nm(ナノ:10万分の1mm)の凹凸が750μm(ミクロン:0.75mm)のピッチで設けられており、これがペン先の滑らかさ度合い、つまり『ザラザラ』『スベスベ』などの感覚を表現している。

10nm程度の凹凸の上から、5nm程度の微細な凹凸が施されている。

小さい方の凹凸はその10nmの山に5nmほどの小さな凹凸が設けられている。これはペン先の引っ掛かり、つまりグリップ感に影響する。
NEGでは、これらの凹凸のサイズを調整することで、マンガ家が望む描き味を演出しているのだという。

「曲線が描きやすい気がします。滑りがスムーズじゃないと、髪の毛などの曲線が上手く描けないんです」と妹尾さん。

NEGの制服姿を描いているシーン
取材に同席いただいたNEGの方の制服姿を描いてもらった。そのままマンガのキャラクターとして登場しそうな仕上がり。

ちなみに、凹凸は粒子を付けているのではなく、ガラスに直接加工を施しているのだという。加工方法は秘密だが、物理的な加工で化学エッチング(薬剤による加工)や、レーザー加工ではないのだという。だから、基本的には摩耗するということがなく、従来のペーパーライクフィルムであったように白っぽくなることはないのだという。

また、妹尾さんはモノクロ原稿が多いのであまり気付かなかったそうだが、樹脂フィルムと違ってガラスなのでディスプレイ表示の色味に影響を与えないというのも重要。表示される色味がズレてしまうと、作品表現の色自体がズレてしまうことになる。

妹尾さんが気に入って3~4カ月経っても使い続けている

妹尾さんは割とデスクに座って液晶タブレットで描くタイプだったのだそうだが、最近飼っている猫の体調が悪くなり、リビングで仕事をする必要が生じてiPadを使う頻度が増えたのだそうだ。そもそもデータ自体はクラウド上にあるから、そこにパソコン×液晶タブレットでアクセスするか、iPadでアクセスするかだけの問題ではある。

「買ったままのiPadだとツルツルするので、何種類もペーパーライクフィルムを試しました。でも、合わないとイライラして「えいや!」と剥がしちゃうんですよね。過去に試した中ではこのNEGのガラスフィルムが一番長く使っている」と妹尾さん。

「歴代で一番長い間剥がさずに使ってるね。もう3~4カ月は使ってる。1カ月に40~50ページ描くとして、3カ月で120~150ページ、もう単行本一冊ぐらい描いてるけど、まったくすり減ったり粉を吹いたりする感じがないよね」と小沢さん。

気に入らなければいつの間にか剥がしてしまう妹尾さんが、NEGのnanoWave™を「剥がさずにずっと使っている」と驚く小沢さん。
気に入らなければいつの間にか剥がしてしまう妹尾さんが、NEGのnanoWave™を「剥がさずにずっと使っている」と驚く小沢さん。

また、ペン先の減りも少ないように感じるという。

一般的にガラスはApple Pencilのペン先より硬度があるので、すり減りそうな気がするが、凹凸のサイズがナノレベルだと、ペン先の摩耗を抑制することができるのだそうだ。ペーパーライクフィルムでは、Apple Pencilのペン先の摩耗が問題になることが多いそうだが、nanoWave™だとそういう問題も少ないだろう。

発売されたら、大人気になりそう

描き味を自在に演出できて、ペン先の減りが少ない。さらに、ディスプレイの表示色に影響を及ぼさず、ガラスフィルム自体の劣化もほとんどない。NEGのnanoWave™加工を施されたガラスフィルムが販売されたら、マンガ家やイラストレーター達の間で大人気になりそうだ。

仕上がったイラスト。Apple Pencilに手に馴染むグリップを付けるのも定番。
仕上がったイラスト。Apple Pencilに手に馴染むグリップを付けるのも定番。

ライター:村上タクタ
iPhone、iPadなどアップル製品を中心に扱うガジェット・テクノロジー系編集者・ライター。カリフォルニアでのWWDCやiPhone発表会にも参加することが多い。バイク、ラジコン飛行機、熱帯魚とサンゴの飼育など、趣味の雑誌の編集者として、’92年から約30年で約600冊の雑誌を作ってきた。2010年からIT系の記事を執筆。趣味とテクノロジーを掛け合わせた記事はもちろん、教育ICT、スタートアップ、行政DXなどについても多くの記事を書いている。『ThunderVolt』編集長。

PRODUCT INFORMATION

購入について

nanoWave™ iPad用ガラスシート

発売時期 2026年初夏予定

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NEGは、微細凹凸技術によるガラスフィルム加工を通じて、タブレット・スマートフォン向けフィルム商品の新たな価値創出を目指しています。

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