地域と共に70年、日本電気硝子が描く"持続可能な滋賀"への挑戦

2024.11.27
「SHIGA」の形に人が集まって並んでいるイメージ

1949年、滋賀県大津市の琵琶湖のほとりに創業。以来70年以上にわたりさまざまな特殊ガラスを開発・製造し、世界中に提供してきた日本電気硝子(NEG)。現在ではグローバルに事業展開する世界的な特殊ガラスの総合メーカーへと成長しましたが、今でも国内の主要な生産拠点は全て滋賀県内に構える企業として、地域社会・自然との共生を大切に、多様な地域貢献活動を続けています。

例えば、事業場内で育てた何万株もの花苗を地域に寄贈したり、将来を担う子供たちに科学への親しみをもってもらえるよう教育支援を行ったり、地域の大学との産学連携により、次世代を担う人材育成を支援するなど。地域社会とともに発展していくことを目指した取り組みを行っています。

NEGにおけるCSRの重点課題(「環境」「多様性」「地域」)の一つである地域に対する取り組みを、一方通行の支援で終わらせるのではなく、地域に喜ばれ、地域社会とともに発展していく活動としてどう継続していくか?NEGでCSR活動を推進し、地域貢献活動に深く関わる担当者 にお話を伺いました。

どんな取り組みが?NEGの地域貢献をご紹介

年間23,000株の花苗を地元に寄贈

社員が花苗を移し替えている様子

NEGの事業場内で丹精に育てられた季節の花苗を地域社会に寄贈する取り組み。2023年には23,000株もの花苗を近隣の幼稚園や学校、自治会などに寄贈しました。年々贈る数も増え、「今年はこれくらい欲しい」というリクエストが寄せられるほど地域に親しまれている取り組みです。

「23,000株もの寄贈ができたのは、NEGの子会社である『電気硝子ユニバーサポート』のスタッフが、花の苗を手塩にかけて種から育ててくれたおかげです。電気硝子ユニバーサポートは、NEGにおける障害者雇用の促進と安定を図るため1980年に設立された日本で6番目の特例子会社です。CSRの多様性にも関わることですが、NEGでは障害者雇用を促進しており、障害者雇用率は法定雇用率(2.5%)を大きく上回る4.6%の達成を目指しています。そうした取り組みを通じて育てられた花苗が、地域の方々に喜んでもらえている。多様性、地域貢献という面で良いサイクルができていると思います」

森林を守ることは母なる湖を守ること。J-クレジットの購入を通じて森林保全に貢献

「びわ湖・カーボンクレジット」パートナー協定締結式にて、三日月大造滋賀県知事と松本元春代表取締役 取締役会長
「びわ湖・カーボンクレジット」パートナー協定締結式にて、三日月大造滋賀県知事<左>と松本元春代表取締役 取締役会長<右>

NEGでは“J-クレジット*”の継続購入を通して滋賀県内での森林保全活動を支援しています。2018年以降滋賀県栗東市の「金勝生産森林組合」から、加えて2021年度より滋賀県造林公社と締結した「びわ湖・カーボンクレジット」パートナー協定を通じてJ-クレジットをそれぞれ継続購入することで、これらの組織による森林保全を支援しています。このような活動によって水を育む役割を果たす森林を守ることが、琵琶湖の水を守ることにつながります。

  • J-クレジット…省エネルギー設備の導入や再生可能エネルギーの利用によるCO₂等の排出削減量や、適切な森林管理によるCO₂等の吸収量を「クレジット」として国が認証する制度です。本制度により創出されたクレジットは販売・購入することができます。

美しい琵琶湖を守るために。「淡海エコフォスター活動」

NEGは、滋賀県が主催する「淡海エコフォスター活動」に参加。これは毎月、ボランティアで琵琶湖岸を清掃する活動で、20年以上前にこの活動が始まった頃から継続して取り組んでおり、美しい琵琶湖を守るため各部署から参加した社員が清掃活動にあたっています。

未来を担う、次世代人材育成

NEGでは、地域貢献の一環として次世代人材育成への支援にも力を入れています。例えば小・中学生向けとして、滋賀県内のすべての小学5年生が参加する体験学習プログラム「びわ湖フローティングスクール」への支援や、大津市科学館でのガラスの不思議に触れる出前授業。中学・高校生向けでは、滋賀県立大学が実施する科学技術振興機構による「女子中高生の理系進路選択支援プログラム」に共同機関として参画、さらには大学への寄附講座開設など、幅広い対象に向けた取り組みを行っています。

学習船「うみのこ」のNegルーム(多目的室)
「びわ湖フローティングスクール」は、学習船「うみのこ」に乗船して琵琶湖を巡り、船内で滋賀の環境について学習するプログラム。NEGは「うみのこ」新船建造時に費用の一部を寄付したほか、同船へのネーミングライツ支援も行う。

「次世代人材育成は、年代別に目的が変わります。小・中学生には、まずはガラスに親しんでもらうことから始めます。それから、ガラスにもコップや窓ガラスだけでなく色々な種類があることを知ってもらえればと考えています。特殊ガラスの会社として、ガラスには様々な形や特徴があり、社会に役立つ素晴らしい素材であることをこどもたちに伝えていきたいんです。ワークショップなどを通して、ガラスの持つ無限の可能性に触れてもらいたいと思っています」

大津市科学館でのワークショップ「出前授業」の様子
大津市科学館でのワークショップ「出前授業」にて

大津市科学館でのワークショップ「出前授業」は、小学校高学年から中学生を対象にNEGの社員が授業を行うもの。人気があるクラスで、応募が始まると定員がすぐに埋まってしまい、抽選になるのだそう。

「出前授業では、ガラスの講義のほか、実際にガラスを切る体験をしてもらいます。NEGの製品である『見えないガラス®』(特殊な薄膜加工によってガラス表面への映り込みがほとんどないガラス)をダイヤモンドカッターで切り、その場で撮影した参加者自分の写真や、授業の修了証を入れたフォトフレームを作るという内容で、とても喜んでいただいています」

大学と密接に連携、寄附講座の開設を通して日本のガラス産業の発展を

一方、大学との産学連携により、ガラスに関する研究を推進するとともに、将来のガラス産業発展の礎となる若手研究者や技術者の育成を支援しています。 NEGが継続的に億単位の資金を拠出し寄附講座を開設、これにより現在、滋賀県⽴⼤学⼯学部には「ガラス⼯学研究センター」が、京都⼤学⼤学院には「ガラス基礎科学講座」がそれぞれ開設され、ガラスに関する基礎研究が行われています。

「滋賀県立大学とは2007年から産学連携を行い、寄附講座の開設や共同研究を行っています。また京都大学では2023年4月から信託⽅式による寄附講座を開設しました。現在、日本の大学ではガラス分野の研究室や研究者が減っていて、特に基礎研究に関しては厳しい状況にあります。一方海外ではガラスの研究が活発で、このままでは日本のガラスが世界に後れを取ってしまう、との危機感があり、ガラスの研究に力を入れておられる両大学との連携を通じて、若い研究者たちを支援することにした次第です。この取り組みでは、単に寄附講座を開くだけではなく、NEGの研究開発部門と交流しながら基礎研究を行うなど、包括的な活動を行っています」

京都⼤学⼤学院「ガラス基礎科学講座」を見学する松本元春 代表取締役 取締役会長と岸本暁 代表取締役社長
京都⼤学⼤学院「ガラス基礎科学講座」を見学
松本元春 代表取締役 取締役会長<中央>、岸本暁 代表取締役社長<右>

京都大学の増野敦信特定教授は、NEGの支援について「日本のガラス技術の発展における可能性を拡げる大きなインパクトがある取り組みである」とコメントしています。

「今、これまで謎とされてきたガラスの構造を調べる分析や計算の手法に大きな進展が見られ、ガラスの研究が新たなステージに入りつつあります。しかしその一方で、日本の大学からガラスの研究室が減っているというのも事実です。そうした環境下で、NEGによる寄附講座が開かれたことは学界に大きなインパクトがあります。潤沢な予算を継続的に基礎研究に充てることで、今まで分からなかった法則や原理の発見につなげられると思います。また、この研究環境は異なる分野の優秀な研究者を集める原動力ともなり得るものです」(増野敦信特定教授より)

京都大学ではすでに国内外の10を超える研究機関と連携しており、さらに滋賀県立大学、NEGとの三者による包括的な基礎研究テーマを協議して、研究の計画を練っているとのこと。こうした大学への支援によって、卒業生がNEGに入社するというケースも出てきているそうです。

実効性を高める体制づくりから。NEGの「CSR委員会」

このようにNEGにおいて積極的な地域貢献活動を行えるのは、CSR活動の実効性を高める体制づくりができているから。NEGの「CSR委員会」では、CSRの3つの重点課題を軸に置きながら、広く企業の持続可能性(サステナビリティ)に関わる諸課題に取り組むべく、「環境チーム」、「多様性チーム」、「地域貢献チーム」という3つのワーキングチームが設置され、それぞれの課題に向き合っています。

「NEGのCSR委員会は、CSRの方向性や活動内容などを包括的に議論し、経営トップに提言するほか、機動的に活動を展開するとともにより適切な情報開示につなげていくため、それぞれのチームに課題に関連する部門長が構成員として参加する、組織横断的な仕組みとなっています」

課題に相対する部門が参加することで、個々の課題を当事者として捉え、問題解決に向け本質的で実効性のある取り組みができる体制が整えられているのです。

地域への取り組みを通して一緒に発展していきたい

地域に対する取り組みをCSRの重点課題の一つに置き、「地域のために何ができるか?」と常に考えているというNEG。NEGが地域貢献を通じて叶えたい想いとは何なのでしょうか?

「地域貢献の活動を通じて地域と一緒に発展し、『地元にNEGがいてくれてよかった』と言ってもらえるような存在になりたいですね。そのためにも、まずは地域が持つ社会的課題をきちんと把握できるよう、地域の方々との対話を心掛けていきたいと思っています。我々は製造業ですから、環境負荷をまったくゼロにすることは難しい。そんな中でもこの地で事業を続けていくためにも社会と自然との共生は欠かせません。地域に喜ばれ、地域とともに我々も発展していけるような取り組みを継続していきたい。このような好循環を作るのが我々の目指すところです」

地域社会からの信頼は、日頃からの地道な取り組みがあってこそ得られるもの。様々な試行錯誤を繰り返しながら、これからもNEGは地域貢献に取り組んでいきます。これらの取り組みの詳細は、NEGが発行する「ESG データブック」や「統合レポート」にて公開されていますので、是非ご覧ください。

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