超薄型軽量ミラー

超薄型軽量ミラー

JAXAが推進する壮大なプロジェクト
「宇宙太陽光発電構想」

今、安定供給できるクリーンな再生可能エネルギーへの取り組みが世界各国で加速しています。日本において期待を寄せられている未来のエネルギー源のひとつが、独立行政法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)で研究が進められている「宇宙太陽光発電構想」です。これは太陽電池パネルを静止軌道上に浮かべ、太陽光を効率よく集光し、発電した電力を地上に送るという壮大なプロジェクトです。
2030年代の実用化に向けたこの夢のプロジェクトに、日本電気硝子は「超薄型軽量ミラー」で参画しています。
今回は、さらに進化した「超薄型軽量ミラー」についてご紹介します。

「宇宙太陽光発電構想」 の実現に必要な、
薄くて軽い巨大ミラー

宇宙太陽光発電 イメージ

「宇宙太陽発電構想」には巨大なミラーが不可欠

巨大なミラーを搭載した人工衛星を宇宙空間に浮かべ、太陽光を集めて発電し、そのエネルギーをマイクロ波やレーザー光に変換して、地上または海上の受信施設に送信するエネルギー供給システム。それがJAXAで研究中の宇宙太陽光発電システム(SSPS)です。
地球上の資源に頼ることなく安定的に電力を得られるのはもちろん、宇宙空間で発電するため、天候や昼夜に関係なく無限の太陽エネルギーを活用できる、まさに究極の自然エネルギーシステム。世界の中でも日本が先行している分野です。

「超薄板ガラス製造技術+薄膜技術」 で応える日本電気硝子

日本電気硝子の、ガラスを薄くする「超薄板ガラス製造技術」と、ナノメートルレベルで反射膜の厚みを制御する
「薄膜技術」の融合から誕生した「超薄型軽量ミラー」は、薄さ100ミクロン(0.1㎜)という非常に薄いガラスに高性能な反射膜を成膜したものです。
2011年には、SSPSのミラーユニットの試作用としてJAXAに納入しました。


JAXAに納入した2種類のミラー

全波長反射膜付きミラー(マイクロ波タイプ)

幅広い波長を持つ太陽光を最大限に利用するためのミラーです。反射効率の高い銀の薄膜をベースに保護膜を組み合わせて構成されており、全太陽エネルギーの約95%を反射します。

波長選択反射膜付きミラー(レーザー光タイプ)

地球にエネルギーを、送るためのレーザー光をつくるミラーです。赤外線など不要な光は透過させ、必要な高いエネルギーの光のみ反射させます。そりを抑えるために50層の薄膜をガラス基板の両面に成膜しています。

※上記掲載のイラスト2点は、JAXAの画像を基に作成したものです。

さらにガラスと樹脂を組み合わせ、
「貼り合わせる技術」で超薄型軽量ミラーが進化

この巨大なミラーを実現するには、さらに「軽く、薄く」に加えて「強く」することが求められます。
そこで日本電気硝子では、大変薄い「超薄板ガラス」と「樹脂」を貼り合せ、耐擦傷性やガスバリア性などガラス特有の優れた性質と、
とにかく軽く、耐衝撃性や飛散防止性など樹脂の長所を合わせ持つ新たな「超薄型軽量ミラー」を開発しました。
0.1㎜の超薄板ガラスと0.05㎜のポリイミド樹脂を合わせた製品を、ミラーの強度向上目的の評価試験用として、JAXAに納入しました。
日本電気硝子は、「超薄板ガラス製造技術+薄膜技術+貼り合わせ技術」、
これら3つの技術を複合させて宇宙太陽光発電構想の実現に寄与していきたいと考えています。


割れても飛散せず、ミラーを守る「ガラス+樹脂」の技術

なぜ「ガラス+樹脂」が有効なのでしょうか?
実は、地球の衛星軌道上は、隕石の飛来や人工衛星の破片などの宇宙ゴミといわれるものがたくさん浮遊している空間です。宇宙太陽光発電構想では、そこにたくさんのユニットで構成した巨大ミラーを搭載した人工衛星を浮かべるため、ミラーに宇宙ゴミなどが衝突して破損することも想定されます。もし、1つのユニットのミラーが割れて飛散すれば、まわりのミラーにも影響を与えかねません。
ガラスと樹脂の貼り合せ技術は、それを防ぐ技術でもあります。宇宙ゴミが当たっても割れにくく、破損したとしてもその破片の飛散を防ぎます。


強度の高いミラーをつくるポリイミド樹脂


樹脂の選定も重要です。
耐熱性や耐放射線性に非常に優れている「ポリイミド樹脂」は、温度差が激しく、有害な放射線にさらされる過酷な宇宙環境で長期にわたり使用できる素材です。
例えば、人工衛星の表面を覆っている金色の材質は、ポリイミド樹脂にアルミメッキを施したものです。身近なところでは、耐久性や電気を通さない性質から、モバイル機器や液晶ディスプレイなどの回路基板にも用いられています。
この航空宇宙分野で実績のあるポリイミド樹脂と、私たちの超薄板ガラスを貼り合せて成膜することで、強度の高い高性能なミラーの実現が可能となるのです。

2030年代の実用化に向け、さらに「薄く」「軽く」に挑戦

計算上、長さ3.5kmにもなるとされる巨大なミラーを一度にロケットで打ち上げることは不可能です。
軽量であること。それが、運搬効率的に非常に重要な鍵となります。
日本電気硝子では現在、重さ1m2当たり100g、薄さ40ミクロンという「超薄型軽量ミラー」の製作に挑戦しています。
そして、さらに樹脂と組み合わせることでその強度を高め、2030年代の宇宙太陽光発電の実用化に貢献したいと考えています。
こうした技術開発の中で誕生する技術は、薄く、軽く、曲げられるディスプレイや照明をはじめとした新たな技術開発、
そして次世代産業の発展にもつながっています。

薄膜 製品情報