誘電特性を制御したガラスの開発
ガラスは誘電体であり、交流電場を加えたとき、そのエネルギーの一部が熱となって失われる誘電損失を引き起こします。この誘電損失は誘電体(ガラス)の誘電特性に依存しており、誘電正接と誘電率の値によって大きさが決まります。一般的に高周波になるほど損失が大きく、誘電正接や誘電率が大きいほど損失が大きい傾向にあります。
プリント配線基板や低温焼成多層基板などに使用されるガラス製品には、低損失な誘電特性が要求されることから、当社では用途に応じて適した誘電特性を有するさまざまなガラスを開発し、提供しています。
コラム:誘電特性とは
誘電特性とは、物質が電場に対してどのように反応するかを表す性質のことであり、重要視される特性には「誘電率(ε)」と「誘電正接(tanδ)」があります。
誘電率とは、誘電体に外部電場を印加した際に、単位電場に対してその物質が電気的に分極(誘電分極)する度合いを示す物性値のことを指します。材料の誘電率を表す数値としては、真空の誘電率を1としたときの、物質の誘電率の相対値を示した「比誘電率(εr)」という値が一般的に用いられます。
誘電正接とは、誘電体内での電気エネルギーの損失の度合いを表す値のことです。次式で示される誘電損失に大きく関係することから、値が小さいほど損失が少なく、値が大きくなるほど、電気エネルギーが吸収され、信号を効率よく伝送できなくなります。
一般的には、誘電正接が高いほど電力消費(熱発生)が大きいため、損失が大きくなります。
誘電損失= 比例定数×周波数×√誘電率×誘電正接
低誘電損失のガラス材料
近年、半導体パッケージ基板といった高速伝送に対応する回路基板材料や低温焼成多層基板、高周波レーダー用途の材料には、伝送損失が小さく、誘電正接と誘電率がともに低い低誘電損失の材料が求められています。当社ではこれらの要望に対応して、低誘電損失の被覆・結合・接着用粉末ガラスやLTCC(低温同時焼成セラミックス:Low Temperature Co-fired Ceramics)用粉末ガラス、ガラスセラミックスコア基板 GCコア™、といったさまざまな低誘電損失のガラス材料を開発し、提供しています。