化学的耐久性を制御したガラスの開発

ガラスの無限の可能性:用途に合わせて化学的耐久性を制御したガラスの提供が可能です

従来、ガラスはその使用用途に応じて主に耐水性、耐候性、アルカリや酸に対する耐久性などが求められてきましたが、電子部品分野では、一般には用いないような特殊な薬液あるいはガスを使用するケースもあり、ガラスにも特殊な化学物質に対する耐久性が要求されてきています。
また、ガラス基板に求められる耐久性についても、従来の「薬液に対して必要十分な耐性を付与する」という設計のほかに、短時間でエッチングなどの表面処理を施す必要性もあり、耐薬品性を制御することも求められてきています。
ガラスの化学的耐久性はその組成に大きく依存しており、当社は用途に合わせたそれぞれの薬品に対して耐久性のある多様なガラス材料を開発し、提供しています。

化学的耐久性を制御した当社ガラス材料
化学的耐久性を高めたガラス
(特性劣化・ガラス成分溶出が少ない)
化学的耐久性を高めた建築用ガラス 特定の化学エッチング工程における
化学的耐久性を制御したガラス
  • 医薬容器用管ガラス:BS
  • 茶褐色医薬容器用管ガラス:BS-A
  • 無アルカリガラス基板:OA-11
  • 高剛性低熱収縮ガラス基板:OA-20
  • 耐アルカリガラスファイバ:WizARG™
  • 結晶化ガラス建材:ネオパリエ®
  • 高耐熱性低熱収縮ガラス基板:OA-31

コラム:ガラスの化学的耐久性

化学的耐久性とは化学的腐食に対する指標であり、一般的にガラスは化学的耐久性が高い材料です。特に水や酸には比較的高い化学的耐久性を示しますが、これは一般的なガラスがSiO2を主成分とする酸化物の共有結合で構成されており、主構造であるSiO2ネットワーク構造が水や一般的な酸に対して耐性があるためです。ただし、主にガラスの加工や白金器具の洗浄に利用されるフッ化水素酸の場合は、主構造のSiO2ネットワーク構造がフッ化水素酸と反応して構造が破壊され溶解するため、耐性がありません。一方で、一般的なガラスはアルカリ性の水溶液には弱く、pH11以上で主構造のSiO2ネットワーク構造がアルカリ溶液のOH基で分断されて溶液中にガラス成分が溶け出します。
耐酸、耐アルカリ性以外にも、水分によりわずかに化学的腐食が発生することもあります。耐水性の低いガラスでは、雰囲気中や溶液中の水分とガラス表面が反応し、表面から金属イオンが溶出したり、表面層がゲル化したりするなどの反応が起こります。特に、発生したSiO2ゲル質が水に溶出する場合は、著しい腐食が起こります。また、空気中に存在する酸性ガス(CO2、SO2など)が、ガラス表面の水分によって内部より溶出するイオン(Na+、Ba2+など)と反応し、ガラス表面に化合物(Na2CO3、BaSO4など)が形成されて、表面が白濁する風化が起こることもあります。

化学的耐久性を高めたガラス

従来、ガラスはその使用用途に応じて主に耐水性、耐候性、アルカリや酸に対する耐久性などが求められてきました。特に医薬容器用ガラスの場合は、ガラスと製剤とが反応しないことが求められ、ガラスは耐加水分解性(耐水性, アルカリ溶出)、耐酸性、耐アルカリ性に優れた「ホウ珪酸ガラス」が使用されています。なかでもガラスからのアルカリ成分の溶出抑制は医薬容器に求められる最重要特性の1つであり、当社の医薬容器用管ガラスであるBS、BS-Aは、ガラスの組成をコントロールすることで優れた化学的耐久性を実現し、アンプルやバイアルなどの医薬容器や試験管などの理化学容器に使用されています。当社は、医療技術が高度化する中、多様なニーズに応じたガラスの開発を進めています。
一方、電子部品分野では、一般には用いないような特殊な薬液あるいはガスを使用するケースもあり、ガラスにも特殊な化学物質に対する耐久性が要求されてきています。
例えば、液晶用ガラス基板に求められる特性の一つに、ディスプレイ製造工程におけるウエットエッチングプロセスや洗浄プロセスで使用される薬品に対する耐久性が挙げられます。また、近年では薬液でなくガスが使用されるドライエッチングプロセスへの対応が要求され、ガスに対する化学的耐久性も求められています。当社の薄型パネルディスプレイ用ガラス基板であるOA-11、OA-20、OA-31や化学強化専用ガラスDinorex®は、ガラス組成をコントロールすることで優れた化学的耐久性を実現しています。

写真:医薬容器用管ガラス(BS)
写真:医薬容器用管ガラス(BS-A)
写真:無アルカリガラス基板:OA-11
高剛性低熱収縮ガラス基板:OA-20
高耐熱性低熱収縮ガラス基板:OA-31
化学強化専用超薄板ガラス:Dinorex UTG{{sup}}®{{/sup}}

化学的耐久性を高めた建築用ガラス

ガラスファイバはコンクリートの補強材として使用され、引張強度、靭性を向上させることで建築・土木部材に幅広く利用されています。しかしながら、コンクリートは強いアルカリ性を示すことから、補強材として使用されるガラスファイバにも耐アルカリ性が要求されます。これら複合材料用に開発された当社の耐アルカリガラスファイバ:WizARG™は、ガラス成分として高濃度のジルコニアを含んだ、耐アルカリ性と耐酸性に優れたガラスファイバです。ガラスファイバ補強コンクリート(GRC)や珪酸カルシウム製品などの補強材、モルタルやコンクリートのひび割れ抑制材として、40年以上にわたって建築・土木分野で幅広く使用されています。
また、結晶化ガラス建材:ネオパリエ®は、耐アルカリ性が大理石の6倍、花崗岩の2倍であり、高い化学的耐久性を持ちます。また、吸水率に関しては大理石が0.30%、花崗岩が0.35%であるのに対して、ネオパリエ®は0%であり、内部に水がしみこまず凍害の心配が全くありません。このため、建築の外装材として非常に優れた化学的耐久性を持っています。

写真:ARGファイバ
写真:ネオパリエ

化学的耐久性を制御したガラス

化学的耐久性に関連する液晶用ガラス基板のトピックスとして、ケミカルエッチングが挙げられます。
液晶ディスプレイパネルの製造工程では、ケミカルエッチングによってガラスを化学的に削ってガラス基板を薄くしています。この工程においては、「薬液に耐えればよい」というガラス基板の化学的耐久性に対する従来の考え方とは異なり、生産性向上のためにエッチングレートの速いガラスの要求もあります。
当社では、ガラス組成を調整することで、お客様の製造工程に適合した特定の薬液に対して溶けやすくしたり、場合によっては溶けにくくしたりするなど、エッチングレートをコントロールしたガラスを開発・提供しています。