強く、軽くするガラスの糸?
ガラスファイバ
極細のガラスの糸が、
社会インフラからモビリティ、情報通信、住宅設備まで。
見えないところで威力を発揮。
「ガラスファイバ」という素材をご存知でしょうか。およそ80年前に工業化された繊維状のガラスです。
たとえば、建築・土木分野において鉄筋を必要としない新しいコンクリート製品の補強材として現在では利用が進んでいます。
また、自動車やエレクトロニクス機器、住設機器などでプラスチックの補強材料としても用いられており、
幅広い分野で強度、軽量化や耐久性の向上に貢献する材料として活躍。
日本電気硝子のガラスファイバは、主に建築・土木用途に用いられる「ARGファイバ」と
主に自動車部品やエレクトロニクス機器に用いられる「Eファイバ」との2種類に分けられます。
今回は、このガラスファイバについてご紹介します。
コンクリート・モルタルや高機能樹脂の補強材として
新たな機能、工法などの開発を可能にする材料や、これまでできなかったことを可能にする部材が、現在さまざまな分野で求められています。
そのニーズに応える素材の一つがガラスファイバです。
暮らしの中に、街の中に、そして世界のいたるところに、ガラスファイバの使用がどんどん広がっています。
鉄筋を使わずに建材に必要な強度を確保する ARGファイバ
ARGファイバは、耐アルカリ性に優れたガラスファイバです。セメント製品に混ぜ、建築・土木部材に利用されています。特にGRC(ガラス繊維補強コンクリート)では鉄筋と違って腐蝕の心配が無いARGファイバが部材全体に均一に分散し隅々まで補強。その高い補強効果のため鉄筋が無くても必要な強度を確保した上、部材の厚みを大幅に薄くでき、建物全体を軽量化できます。
また、建築分野はもちろん、ネット状に編み込んだものが水路補修・補強やトンネル壁のはく落防止用など土木分野でも採用されています。
GRCボードの断面
セメント製品との親和性が良く均一に混ざるためボード全体を補強します。
ARGファイバ(耐アルカリ性ガラスファイバ)
強くて軽量、豊かなデザイン性の実現で建築の概念を一新
GRCの特長の一つが豊かなデザイン性の実現です。複雑なデザインも型枠を用いて工場で生産、モジュール化により取付工事も容易にでき、建築の可能性を広げます。また、GRCボードを床材として用いれば、乾式施工化も可能。骨組みを組み立てた上に敷きつめるという従来の概念を変える工法で建築できるなど、さまざまな工法に対応し、現場での作業を簡素化できるため工期短縮やコスト削減も図れます。
ARGファイバ施工事例
伝統的な意匠をモジュール化で再現
GINZA KABUKIZA「歌舞伎座」
昔の趣そのままに再現された東京のGINZA KABUKIZA「歌舞伎座」。唐破風(からはふ)や欄干など難しいとされた伝統的な意匠の再現に、私たちのARGファイバが活躍しました。装飾用モルタルにARGファイバを使用することで部分ごとのモジュール化が可能になり、細部まで容易に、忠実に再現することができたのです。しかも、従来よりも軽量で強度があり、工期の短縮にも貢献。伝統と先端の融合した美しさが、歌舞伎座の新たな歴史を刻みます。
床用GRCボード
モジュール化
アールのついたバルコニーをモジュール化して施工
窓枠全体をモジュール化して施工
古い建物の装飾もモジュール化して容易に施工が可能
樹脂に高付加価値をもたらすEファイバ
Eファイバは、樹脂と組み合わせることで樹脂の強度、耐熱性、硬度、寸法安定性などを向上させます。
これにより、自動車部品や住設機器をはじめ幅広い分野で活躍しています。
また、ガラスの持つ電気絶縁性により、エレクトロニクス機器の小型化や薄型化などの進化に役立っています。
機能樹脂用チョップドストランド
チョップドストランドマット
強化プラスチック用ロービング
樹脂の用途を広げ、自動車産業などに貢献
例えば自動車。もともと多くの金属部品で構成されていましたが、現在は生産工程の簡素化や燃費、安全、環境性能の向上要求が高まり、より軽い樹脂を使ったモジュール化が進んでいます。
ではなぜ、樹脂が強度のある金属にとって代わることができたのでしょうか。その秘密がガラスファイバです。
軽い樹脂にガラスファイバを強化材として混合することで、高機能性を実現したのです。
また、樹脂は射出成形により複雑な形状の部品でも効率的に生産することができ、今では屋根やドアといった内装部品のほか、エンジンマウントや吸気管など随所に使用され、燃費の向上や生産工程の簡素化による省コストに貢献しています。
日本電気硝子のガラスファイバは
これからも、世界に、未来に、
幅広く貢献していきます。
ガラスファイバは今、さまざまな分野へと用途が広がっています。
例えば、軽くて強い電柱や耐ハリケーン用外壁などの防災用建材、風力発電の羽根など、
インフラや防災といった国や社会を支える分野でも活躍しはじめているのです。
これからも私たちは、ガラスファイバの用途の可能性を追求し、身近なことからエネルギーや資源など地球規模の問題解決に至るまで、
幅広く貢献していきたいと考えています。